
【クライミング】少年よ!頑張れ!
我々の店舗内に小さなクライミング施設があります。
その名も「湾岸クライミング」
年間約1万人ものの子どもたちが訪れる小さなスペース、
そこでは毎週のようにドラマが生まれます。
写真にはありませんが7メートル弱のトップロープクライミングウォールがあり
当店のルールは以下のようになります。
1.1参加につき2回チャレンジできます。
2.初めての方は1回目フリークライミングします。
3.1回目が成功したら2回目はスタッフがルートを指定します。
今日はこんな小学低学年の子どもがいました。
まずボルダリングをチャレンジして、かなり楽しかったのか
7メートルのトップロープクライミングもチャレンジすることにしました。
でも1回目から途中で止まってしまい、ある一定の場所(地上から1.5メートル)から動けなくなりました。
当店も時間制限(15分)があるので1回目の最中にスタッフが本人に聞きました。
「途中で降りるのも、頑張るのも自分で決めよう!できない事は全然恥ずかしくないよ」
彼は少し考えてから自分で降りはじめました。
そして降りてから両親の顔を見て、苦笑しながら色々な言い訳をしました。
ご両親は何も言わず、笑いながら
「次も頑張ってごらん」
と言いました。
2回目のチャレンジ・・・・・
少し先ほどより粘ったものの、同じ場所で止まり
そしてリタイアしました。
「ナイスチャレンジ!」
私は心からそう思ってねぎらいました。
初めから挑戦しない事よりも、ずっと勇気ある行動だったからです。
彼は真っ赤な汗だくの顔で、静かにこうつぶやきました。
「ありがとうございました」
次の挑戦者、彼より1年ほどお兄さんですが身長が同じくらい。
1回目は楽々クリアし、2回目のルートも何とかクリアしました。
もの凄いやりっきった感のある顔で降りてくる少年。
両親も拍手して称えます。
さっきの少年は、当店のカフェで飲み物を買ってもらい、それを飲みながら
遠くから眺めていました。
私が次に気づいたのは多分30分後位でしょうか?
まだ少年と両親はテーブルに座っていましたが、そろそろ帰るような雰囲気です。
30分の間に家族間で、どのような会話がなされたのか分かりませんが
少年の異変には気付きました。
両親が立って先に歩きはじめます。
少年は下を向いて悔し泣きをしていました。
両親が呼んでいるのに立ち上がりません。
そして両親も、あえて迎えに来ないのです。
少年は、また別の子どもがやっている、先ほどのトップロープクライミングウォールを
頭を上げて見つめました。
少年の目から涙がこぼれて止まりません。
「また来なよ!」
私はそれだけ言いました。
少年は何も言わずコクリと頷いて、両親の後を追いかけました。
目を真っ赤に腫らした彼の中で、何かが変わった瞬間に私は思えました。
*写真はイメージです